2013年7月10日水曜日

年金運用効率化計画。年金運用手順を見直して、低予算で年金制度の魅力を向上させる方法

今回は、「年金運用効率化計画」について提案します。
年金運用手順を改善する事で、低予算で年金制度の魅力を上げる方法です。

o 年金の実質運用利回りが向上します。
o 年金加入者の利便性とお得感が上がります。
o 年金運用にかかる経費と人員の増加を抑える効果があります。
人員が余った時は、他の行政サービスを改善する事が出来ます。

年金運用効率化計画の仕組み
次の改善を行う事で、年金の運用効率向上と実質運用利回り向上を実現します。
1. 年金保険料の前納割引率向上
2. 年金滞納企業に対する強制融資と、悪徳企業名の全国公表
3. 倒産、破産時の債権規則変更
4. 死亡届連動と、年金不正時効の廃止
5. 年金運用に関する総合監査
 
1. 年金保険料の前納割引率向上
国が運用する全ての年金について、年金保険料の前納割引を行います。
(a) 1年分を前納する時の年金保険料を、定額から 0.5%割引します。
企業が納める年金保険料に対しても割引します。
運用利率の期待値は年平均 1%以上ですので、多少お得に設計します。
(b) 国以外が運用する年金に関しては、「国の」割引の対象外とします。
国民年金や厚生年金に組み込む時は、全額納付してもらいます。

2. 年金滞納企業に対する強制融資と、悪徳企業名の全国公表
国は、年金保険料の滞納企業に対して、次の事を行います。
(a) 滞納倒産した企業の名前を、インターネットで全国に公表します。
従業員から預かった年金保険金の滞納分も合わせて公表します。
企業名の他に、滞納額と所在地などを、24時間公開します。
(b) 年金保険料を滞納した企業に対して、立て替え融資を強制的に行います。
年金保険料の立て替え代金として、低金利で貸し付けます。
融資を拒否した滞納企業は、滞納倒産企業と同様に全国公表します。
(c) 滞納が無くなった企業は、公表結果から外します。
立て替え融資を行った場合も、自動的に外れるようにします。
(d) 上記の他は、従来通りに滞納企業に対応します。

3. 倒産、破産時の債権規則変更
年金滞納企業が倒産すると、年金制度の運営に大きな影響を与えます。
国は、債権に関する法律を次の様に変更します。
(根拠については、下にある「留意事項」欄の7番をご覧下さい。)
(a) 債権の優先順位について、「年金保険料」を最上位に設定します。
税金や健康保険料よりも上位に設定します。
従業員から預かった年金保険料も、この債権に含めます。
(b) 年金保険料の立て替え融資の債権優先順位を、税金の次に設定します。
他の融資よりも優先順位を上げます。
(c) 全ての年金保険料を、倒産と破産の免責対象外とします。
(d) 回収した年金保険料は、全従業員に平等に割り当てていきます。
年金保険料の少ない人から順番に、1等級ずつ割り当てていきます。

4. 死亡届連動と、年金不正時効の廃止
国は、年金運用手順に次の3点を追加します。
(a) 死亡届を受理した時点で、年金の支払いが必ず止まる仕組みを作ります。
住基ネットに加入しない市区町村でも、手動で止めてもらいます。
年金番号が必要な時は、役所側で対応してもらいます。
死亡情報は国にも送り、国の年金担当者が停止を再確認します。
(b) 国と自治体は、年金受給者の目視生存確認を10年毎に実施します。
受給者の年齢が10で割り切れる年に、その受給者の生存を確認します。
市区町村などに協力を仰ぎ、長寿のお祝いの品を持っていく形で行います。
生存が確認出来ない時は、国と自治体が全力で生存確認を行います。
(c)「年金に関する不正行為」に対する返還の時効を無くします。
横領や不正受給した時に、全額を必ず返還させるようにします。

5. 年金運用に関する総合監査
国は、年金制度の運用について総合監査を実施します。
(a) 内閣は、年金運用監査チームを作ります。
監査チームには、最高の人材と環境を揃えます。
主要メンバーは、年金運営に関係の無い人から選びます。
厚生労働省から選ぶ時は、情報の取り出しに強い人を選びます。
(b) 監査チームは、次の事を行います。
年金積立金の運用について、帳簿にある金額が正しいかどうか確認します。
年金保険料の滞納企業、滞納者摘出手順を確認します。
運用手順よりも早く正確に見付ける方法について調べます。
また、運用手順では見付け難いパターンを摘出します。
例えば、倒産、破産、適用事業所廃止パターンについて調べます。
この他に、抜けがありそうなパターンについて確認します。
例えば、従業員から預かった年金保険料の滞納状況を確認します。
厚生年金の適用を不正に逃れている事業所の発見手順を開発します。
滞納企業を発見した時は、その情報を担当大臣と年金担当者に伝えます。
この他に、年金運用を早く確実に行う為の指摘を行います。
(c) 監査結果報告書は、週に1回程度提出します。
前回の報告以降に発見した事を、担当大臣に報告します。
監査結果の他に、監査担当者の見解や意見も掲載します。
(d) 内閣は、関係する省庁に対して、監査への全面協力を指示します。
怠慢などの妨害行為を行った省庁には、金銭的なペナルティを与えます。

年金運用効率化計画の特徴
この仕組みが実現すると、次の7つの効果が期待出来ます。
(1) 全国の住民。年金制度に対するお得感と安心感
(2) 厚生労働省。年金運用に関する心配事の低減
(3) 企業。真面目に納付している企業のお得感向上
(4) 金融庁。株式市場の株価上昇
(5) 経済産業省。国内消費の増加
(6) 国土交通省。旅行人口の増加
(7) 総務省。住基ネットの導入促進効果
 
(1) 全国の住民。年金制度に対するお得感と安心感
前納の割引率が上がりますので、年金納付時のお得感が向上します。
また、年金が効率的に運用される事で、年金制度に対する安心感が向上します。

(2) 厚生労働省。年金運用に関する心配事の低減
納付の部分が改善されますので、年金運用における心配事が少なくなります。

(3) 企業。真面目に納付している企業のお得感向上
「前納すると得をする」「後納すると恥ずかしい」
という事になりますので、年金納付時のお得感が向上します。

(4) 金融庁。株式市場の株価上昇
年金システムの納付率が向上する事で、金融市場に好影響を与えます。

(5) 経済産業省。国内消費の増加
年金制度に対する安心感が広がる事で、国内消費の促進効果が得られます。
また、小幅ですが、中小企業の倒産低減効果があります。

(6) 国土交通省。旅行人口の増加
年金制度への信頼感が向上すると、レジャーや旅行に出掛ける人も増加します。

(7) 総務省。住基ネットの導入促進効果
住基ネットを完全導入した時の、市区町村の業務効率が向上します。
理由は、死亡手続き手順が少なくなるからです。

留意事項
「年金運用効率化計画」を設計する時は、次のような工夫が必要です。
 
(1) 現場協力者の解雇防止
運用効率向上に協力した人を解雇しないように気を付けます。
どうしても解雇が必要な時は、新しい働き先を用意すると、現場の不満を軽減させる事が出来ます。

(2) 慎重な監査
年金運用現場の監査は、念入りかつ慎重に行います。
次のリスクがありますから、情報を外部に漏らさないように気を付けます。
個人情報の漏えいリスク
投資情報漏えいに伴う、年金の運用利回りへの悪影響リスク

(3) 監査結果が悪かった時の対応について
年金積立金が予想以上に低かった場合でも、慌てる必要はありません。
年金受給者への支払いが滞らなければ、年金制度は維持出来るからです。
早期に問題を対策して、年金制度の安定化を図ります。

(4) サイバー犯罪対応に関する監査
監査計画に余裕がありましたら、サイバー犯罪関連の監査も行います。
理由は、サイバー犯罪を放置すると、年金積立金が予想外に低くなるからです。

(5) 医療進化対応
年金の積立額が上がっても、安易に年金保険料を値下げしないようにします。
理由は、医療が進化する事で、人の寿命が延びる可能性があるからです。

# 一番現実的な方法は、年金を積み立て方式に移行しようと努力する事。
# 年金の運用利子は複利ですから、積立金が大きいと利益が膨れ上がります。
# (もちろん、物価利回りよりも運用利回りの方が大きい事が前提です。)
#

(6) 健康保険制度への適用
この計画は、健康保険制度の運用改善手段として利用する事も可能です。

(7.ご参考) 年金保険料の全額を債権の最上位に設定する理由
現行制度では、年金保険料の全額を最上位の債権にする必要があります。
理由は、事業者が倒産・破産すると、次の問題が起こるからです。
(a) 「年金保険料の納付」確定時期
事業所が従業員の給与を支払った時点で確定します。
もしくは、従業員の給与を支払うべき日に確定します。
しかも、年金手続き上は「事業所分も含めて全額を納付した」事になります。
これらの全額を、他の加入者(と国)が負担する事になります。
(b) 「事業所の滞納」の意味
事業者が滞納すると、国は滞納分を運用出来ません。
運用利益の機会損失は、他の加入者(と国)が負担する事になります。
複利で響いてきますので、年金受給額の低減につながります。
(c) 国民年金への影響
この問題は、国民年金の受給額にも影響を与えます。
厚生年金側が全額負担しないと、国民年金側で負担する事になるからです。
滞納や滞納倒産の影響で、国民年金の受給額が下がります。
その結果、生活保護の対象者増加に拍車をかける事になります。
厚生年金側の問題なのに、国民年金側が負担する事になります。
国民年金は低所得者の命綱となっていますので、この負担は迷惑です。

参考文献
o ご参考。年金運用利回りの推移
▽年金積立金管理運用独立行政法人(厚生労働省)の「運用状況」にある資料「平成24年度業務概況書[PDF:1.91MB]」の13ページ
年金運用利回りは、2001年~2012年の平均で1.54%でした。

o ご参考。現在の死亡確認手続き

o ご参考。厚生年金保険料の、滞納率の推移
▽エスアール雑談の「厚生年金保険料の滞納率 事業所数ベースでは9.29% 平成22年度」
厚生年金保険料の国への滞納率は、金額ベースで3%以下でした。
但し、次の点は未確認です。
数値に従業員からの預かり分滞納も含まれているのかどうか
数値に倒産、破産、任意適用取り消し事業所が含まれているかどうか

o ご参考。高齢者数に関する統計情報
▽総務省統計局の「日本の統計-第2章 人口・世帯」の中にあるリンク「2- 5 年齢5歳階級別人口(エクセル:26KB)」
2011年現在、65歳以上は 2975万3千人、60歳~65歳は 1063万2千人。

o ご参考。平均余命に関する統計情報
▽厚生労働省の「平成22年簡易生命表-1 主な年齢の平均余命」
2010年現在、65歳時点での平均余命は、男 18.86歳、女 23.89歳でした。


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関連ページ:
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(2013年7月15日変更。文章の整形)